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甘めの言葉で

―『青柳』と書いてある札を見ながらチャイムを鳴らす。

優乃の家から凛の家までは自転車で10分程度。

メールで書かれた『葵香音』

と呼ばれた凛の友達と仲良くなれるか不安になる。

香音ちゃんって子はまだ来てないのかな?

そう思いながら待っていると

 「はぁ~い‼」


と元気な凛ちゃんの声がした。

 「こんにちは~」


ドアを開けながら笑顔で連れてくる。

 「この子が葵香音で,あちらは大原優乃ちゃんだよっ」


まだ玄関前なのに平気で紹介する凛ちゃんを見て

香音ちゃんも私も目を合わせながらとまどう。

 「あれぇ~?どうしたのっ?さあさあどうぞ‼」


お邪魔しまぁす。と言いながら部屋を見渡すと

視界に入ってきた小さな動物がいた。

 「この子がトイプー(トイプードル)のちょこちっぷ。」


 「この子がハリネズミのきゃめるです。」


凛ちゃんが抱えたトイプーも

香音ちゃんの手に包まれているハリネズミも可愛かった。

 「うちら,近所だからよく動物の話題で盛り上がってね~」


だからか。と優乃は思った。

隣同士だから自転車が置いてなくても普通なんだ―

ハリネズミはよく動画でお風呂にちゃぷちゃぷ入っている

可愛い姿を見ていてハリネズミはずっと飼いたかったのだ。

でも犬好きの母親からはハリネズミ⁉ダメダメ‼ばかりで...

針がとげとげしてて痛そうだしエサはミミズだしって...

ミミズ以外にエサはあると思うんだけどなぁと

想像していたら自分がぼーっとしていることに気が付いた。


 「あっ。そうそう。明日ぁ...」


と話を切り出したのは凛だ。

話題が自分の愛犬やら愛ハリネズミ(?)の話で裏返ってしまったからだ。

 「明日のプランはねっ♪」

身を乗り出して自分が自ら途中まで書いておいたメモを

そっと取り出した。

 「ちょっ。凛!そこまで書いてるなら呼び出すことんないんじゃ...」


 「まぁまぁそれくらいは許してくださいな!」


最後の『な』が入っていた方が良かったのか

悪かったのかは判断できなかった。

凛が書いたメモをのぞいてみると―


~猫カフェまったりタイム~

9:00 集合

10:00頃 にゃんこカフェ

11:00頃 ゆったり散策

11:30頃 アンティーク風なお洒落なお店


5:00頃 解散


と可愛い丸文字で可愛い言葉を使って...

 「...ん?これ全部時間ビッシリなん⁉」


 「うーん。可愛いお店があったら話は別だけど。」


 「いやいや、『まったり』だとか『ゆったり』って文字
  入ってるから時計こまめにチェックした方が良くない?」


 「うん!私もそう思うよ‼ある程度決めちゃったら
  他の楽しみが無くなると思うの。
  集合と解散時間さえ決められれば後は自由♪
  ふと、思いついてたくさんの場所に行ける方が私は良いな♪」


凛を否定せずにわざと『甘め』の言葉を使った。

凛は空気が悪くなるのが大の嫌いなのだ...(→いつも自分から悪くする)


ということで今日の楽しみが終わった。

朝までの時間が恋しい。自分が馬鹿のようだった―
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