青春ヒロイズム
「何怒ってるの、友。その子が勝手にカバンを手から離しただけじゃん」
「それは、ナルが森ちゃんにぶつかったからだよね?」
「そうだっけ?」
惚けたように振り返ったナルを見て、彼女の友達数人が笑いながら肩を竦める。
「みんなは違うって言ってるみたいだけど」
ナルのスカした態度は、私をさらに苛立たせた。
「そんなことない。私はナルが森ちゃんのことを押すのを見てたよ」
「ふーん。友の発言を証明してくれる人は、ほかにいるの?」
「いるよ。絶対、私以外にも見てたし。森ちゃんだって、証明できる」
意気込んで振り向いたけど、森ちゃんは肩を震わしながら俯いていて。他に頼りになりそうな人を探して視線を巡らせたけれど、みんな素知らぬ顔で私とは目を合わそうとしない。
それを見たナルがまた、私のことを鼻で笑った。
「いないみたいだけど?」
「そんなことない!だって、私、噂で聞いたんだよ?ナルたちが森ちゃんに嫌がらせしてるって。森ちゃんが部活も学校も来れなくなったのは、あんたたちに原因があるんでしょ?」