青春ヒロイズム
渋々ペアを変わった私たちだったけど……
そのことによって私たちの士気は乱れて、野宮さんたちの村田さんに対する地味な嫌がらせも始まった。
いつもは笑って受け流している村田さんだけど、今日の野宮さんたちの態度は結構ひどい。
ひどいと思うけど、正直なところ今の私には彼女たちに面と向かって文句を言う気力は備わっていなかった。
それでも、まだ立ち上がらない村田さんのことを今日は放っておく気になれない。
「ジュースでも買ってこようか?」
いつもの練習後はそっとフェードアウトするようにその場を去ってしまう私が、気付くと村田さんは声をかけていた。
「あ、ごめん。疲れてぼーっとしちゃってた」
はっと肩を揺らした村田さんが、私を見上げてふわっと柔らかく笑う。
もしかしたら泣いているかもしれない。
ほんの少しそう思っていたから、いつもと変わらない村田さんの笑顔に勝手にほっとした。