青春ヒロイズム
「あの先輩たち、あんまり評判良くないから気を付けろよ」
震える手を一度ギュッと握りしめてから財布を受け取ると、星野くんが不愉快そうに眉を顰めた。
「ていうか、お前ならあんなの一言毒吐けば撃退できたんじゃねーの?この前みたいに、生理的に無理とか言ってやればよかったのに」
助けてもらったのにすぐにお礼を言わなかった私は、星野くんの目に感じの悪い、嫌なやつとして映っただろう。
星野くんの言い方は、嫌味っぽくてトゲがあった。
すぐにお礼の言葉が出なかったのは、状況整理に頭が追いついていなかったせいなのだけど……。
あとから何を言っても、言い訳にしかならない。
それに、どうせ星野くんには嫌われているんだ。
そう思ったら、取り繕うのも面倒だった。
「そっちこそ、嫌いな女子のことなんてほっとけばよかったのに」
ますます嫌われることを承知で嫌味を返すと、星野くんが苦々しげな表情を浮かべた。
「だからって困ってるやつをほっとくのはまた別の問題」