青春ヒロイズム


村田さんが「イチゴミルク」と言ったのが気になって三人のほうをチラ見する。

彼女が言う通り、星野くんの手にはイチゴミルクのパックが握られていた。

あれは落とされて潰れたやつだ。

交換してくれたけど、甘いの苦手だったのかな。

少し申し訳なく思いながら見ていると、星野くんが村田さんの隣にしゃがむ。


「それより智ちゃん、今日は横断幕手伝ってんの?」

「うん。部活まで時間あるから」

「ふーん。なら、俺も手伝おうかな。ここ、黄色で塗ればいいの?」

「そう。筆と絵の具は、友ちゃんの後ろだよ」

村田さんがそう言ってこっちを指差したとき、星野くんとうっかり目が合った。


どうしよう。星野くんたちのこと、ちょっと見過ぎた。

焦って顔をそらしたけど、なんとなくまだ星野くんの視線を感じるような気がする。

ついさっき、自動販売機のところで星野くんが私に笑いかけてくれたけど。

あれは星野くんの気まぐれか、もしくは私の目の錯覚だった可能性だってありうる。




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