本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
ベッドから立ち上がり、乱れた髪の毛をかきあげながら私を見下ろし、指示を出す姿にキュンとしてしまった。

仕草と伏し目がちな目線が大人の色気のようなものを感じて、胸を締め付ける原因になった。寝起きが悪すぎて、不機嫌そのものなのに…。

「失礼致しました。お茶とチョコレートありがとうございました」

私は一礼をし、支配人の休憩室を出た。支配人にドキドキさせられた後は、違うドキドキが待っていた。

どうやら、迷子になったらしい…。

あれ?

地下から階段で上がって、右に曲がって良かったんだよね?

ボイラー室の前なんて通った?

薄暗い廊下を通り、ウロウロしていると…後ろから声をかけられて肩がビクッと縮こまる。

「お前、そっちは違うから!」

「…すっ、すみません」

「まさか、とは思って急いで部屋を出たんだが、そのまさか…だったとはな。お前は期待を裏切らなくて面白い奴だな」

「………?」

「こっちだから、着いて来い」

支配人は笑いを堪えているのか、拳を口に当てがい、肩が震えてる。

"期待を裏切らなくて面白い奴"───良い意味にとって良いのか、悪いのか…。

良く分かりません。
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