本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
若干、脅しの入ったような低い声で言い切り、私に背を向けて、横向きになった支配人はすぐに寝息を立てた。

何故に今、寝るのか?と思ったけれど、支配人の休憩時間をなくしてしまったのは度重なったミスのせいだと思い直した。

よっぽど疲れてるのかな、眠るの早いなぁ…。布団をかけてあげた方が良いかな?

少し迷ってから、ベッドの端に畳んであった布団をかけようと近寄った時、寝ぼけているのか…、寝言を言っていた。

『よりこ』って───……

「支配人、30分たちましたよー。しーはーいーにーんってば、起きて下さいー」

約束の時間になったので起こしても、起きようとしない。

本当に叩く訳にもいかずに耳元で言ってみても起きる気配はなく、困り果てて、顔を覗き込んでみたら…

横向きで寝ていた身体が反転し、私の顔の真下に支配人の顔があった。

うっすらと目を開けた支配人は、「おはよ、依子…」と言って、私を引き寄せた。

寝ぼけている上に勘違いしている。

人違いだし、業務中だし、汗をかいた後だし、色々な思いが頭の中をグルグルと駆け巡りながら、

…早まっていく鼓動。

ドキドキが支配人に伝わってしまうのではないか?と思うぐらいに、強く跳ね上がっている。

そんな私の事なんかは気付くはずもなく、また寝息を立てて寝てしまっている。

離れるには…、起こさなきゃ!

まずは腕をほどき、自分の身体を解放した後に「ごめんなさいっ」と一言お断りしてから、バチンッと頬を叩いてみた。

不機嫌そうに「痛ってぇなぁ…」と呟き、起き出した支配人の髪の毛が乱れていた。

「お前、叩くの強すぎ!」

「すみません…、何度も起こしたのですが起きなかったので…」

「ほら、身支度整えたら行くぞ。お前は化粧直しをしてから、支配人室に集合な」

「分かりました…」

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