本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「そっか、そっか!可愛いね、篠宮さんっ」

星野さんは笑みを浮かべ、まるで子供にするかのように私の頭を優しく撫でる。

そんな私の横で優月ちゃんが呆然と立ち尽くしていた事に気が付いたが、私よりも先に気付いたのは星野さんだった。

「中里さんも頑張ってるよね、偉い、偉い!」

同じ様に頭を撫でられると優月ちゃんは、ほんのりと頬が赤くなった。

おかずの盛り付けが終わり席に着くと、星野さんは優月ちゃんの横に座り、問いかける。

「食べながらでいいんだけどさ、ちょっと聞いてくれるかな?会ったら話そうと思っていた事があって…中里さんにオファーなんだけど料飲事務やらない?派手さはないけど、食材の原価計算とか楽しいよ?…もし良かったら考えておいてね」

「……はい、考えておきます」

「勝手な行動をすると真壁総支配人に怒られちゃうから、後程、きちんと話をして推薦しときます。それまでは聞かなかった事にしておいて」

「……はい」

終始、俯きっぱなしの優月ちゃんは緊張しているかに見える。

優月ちゃんの方向を見ながら話している星野さんだったけれど、緊張して固まっているのに気付いたのか、話を終えると前向きになり、私の方を見て話す。

お箸を持ったままで箸が進んでなかった優月ちゃんは、星野さんの視線から外れるとやっと口に食べ物を運んだ。

優月ちゃん、顔が真っ赤だ。
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