本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「篠宮さんは以前のホテルではフロントに居たんだよね?確かに接客向きだと思うよ。レストランでも大歓迎だからね、希望の部署は前向きに考えてみて」

「ありがとうございます!」

星野さんからのお誘いは勿論嬉しいのだけれども、婚礼サービスはめちゃくちゃ疲れました。

仕事スイッチが入った星野さんは人が変わったように厳しく、それでいてお客様の前では極上の笑顔でサービスをする、正にプロなのだ。

レストランサービスは嫌いではないが、配膳会の方々のレベルにも着いていけず、自分の限界が見えた気がした。

星野さんは『慣れもあるよ』と言うけれど、慣れだけではない、持って生まれた天性もあるので私には向いていないかもしれない。

いつの日か、婚礼の介添人はしてみたいとは思うけれど…。

「今夜のブッフェは小規模だから、そんなに大変じゃないと思うよ。休憩が終わり次第、会場に来て。俺は先に行くから、時間までゆっくりしてね」

星野さんは忙しいのか、食べ終わると直ぐに席を立ってしまった。食器を下げた後にバイバイと手を降る姿は、まるで少年の様に若々しかった。

「……はぁっ、緊張したぁ。私、カッコイイ男性って免疫がなくて近くに居るのが苦手なの」

星野さんが居なくなった後に優月ちゃんが漏らした本音。

緊張してたのは気付いていたけれど、そんな理由だったとは思いもよらなかった。

「私も緊張するよ。星野さん、アイドルグループに居そうだもんね。あの笑顔にキュンってくるよね」

「キュンってするけど、苦手なの!高校生の時に大学生の気になる人が出来て告白した時があって…その人、本当にカッコイイ人だったけど、性格が凄く残念な人だった。

お前なんかが俺に告白してきて恥ずかしいとか散々言われたの。それからトラウマになっちゃって、怖いの…」

「…優月ちゃん」
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