本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「まっ、まさか!鈴木様にスイートをお貸しするとは思いもしませんでした!」

またまたエレベーターの中。

何も知らされずに対応させられ、一段落ついたので、ほっと一息ついたところ。

支配人がいつの間にかに外出中の鈴木様に電話連絡をし、スイートルームへの移動の確約を取り付けていたとは知らなかった。

驚きを隠せずに興奮しながら話かけてしまったが、支配人は微動だにせず返答してくれる。

「鈴木様は本店のお得意様なんだ。こちらにも興味を持って、今回は御予約頂けた。今回しくじると本店にすら宿泊しなくなる可能性も出てくる。しかし、チェックインの時間になり、部屋がないのも事実。

お客様を選ぶ訳ではないが、新規のお客様をスイートルームにご案内すると後々、面倒事になり兼ねない。ならば、信頼の置ける鈴木様に御理解頂き、移動をしてもらおうと考えた訳だ。

この事が吉と出るか、凶と出るかは…分からないけどな…」

「なるほど…。でも、私がいたホテルではよっぽどの繁忙期以外は逃がし部屋ありましたよ?こちらはないんですね?」

「いや、いつもならある。

今回の件はダブルブッキングした上に、キャンセルを見込んでオーバーブックして満室にしてしまい、逃がし部屋も作らなかった。しかも、それをチェックインまで隠し通していたとは…とんだ馬鹿がやる事だな」

「そ、そうですか…」

ダブルブッキングとは同じ部屋に2つのお客様が予約してしまう事、オーバーブックはキャンセルを見越して余分に予約を入れてしまう事。

老舗高級ホテルが本店の系列ホテルがオープンしたとメディア等でも取り上げられ、予想外に予約が集中。

予約した者も慣れない為に、試行錯誤してミスを侵してしまう事になった。
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