本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
支配人は淡々と話し、掃除用具のある場所へと向かう。

掃除用具、シーツ、タオル、アメニティなどを台車に乗せて、業務用エレベーターから客室エレベーターへと乗り換えた。

「次は鈴木様が宿泊した部屋を掃除する。ここは到着時間が遅いお客様を入れる事にした。お前は、水周りを頼む」

ピピッ、ガチャッ。

鈴木様が宿泊していた部屋にカードキーを差し込んでロック解除をしてから入り、早速、支配人はシーツを剥がし、ベッドメイクに取り掛かる。

私もお風呂、洗面所、トイレ等を掃除し、仕上げに水滴が落ちていないように拭きあげた。

途中、支配人の様子が気になり、陰から覗いてみると…無表情で掃除機をひたすらかけている姿に何だか可笑しくなり、声を潜めて笑ってしまった。

細かい物を補充し、最終チェックをし終了。

お風呂周りを掃除をしたせいか、汗なのか、知らぬ間に濡れたのか、ブラウスがしっとりして、額にも汗の粒がついている。

「……お疲れ様」

ボソリと言われ、タオルを投げられる。

「あ、有難う御座いますっ」

お礼を言い、投げられたタオルを受け取り、汗を拭う。今、一瞬、私の身体を上から下まで見渡された気がしたけど?

「今日はもう上がるか?疲れただろ?」

掃除用具を台車で運ぶ途中、優しく話をかけてくれた。

「…えっと、まだ大丈夫です。頑張れますっ」

「そうか…。じゃあ、少し休憩しよう。」

その後も口角をあげてフフッと笑い、流し目で私を見ながら言ったので、私は頬に火照りを感じて顔を反らした。

「………はい」

か細く、聞こえるか聞こえないかのような声で返事をして、まともに支配人の顔は見れなかった。
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