慈愛のケモノ
考えたこともあまりなくて、ふわりとした答えになってしまう。
今まで好きになった人がいないわけじゃない。
でもそれは殆ど憧れに近くて、そういう虚像に執着していたんだと思う。
「そんなの当たり前じゃない……?」
「引かないでよ」
「自分が一番好きで、相手も自分が一番好きで付き合うんだもん」
「でも、世の中の恋愛全てがそう上手くいくわけじゃないと思うし。私は好きになって貰えるだけで、有り難いなあと思うよ」
一般的なことも言ってみる。確かに、そもそも真希にとって恋愛が好き同士付き合えることだと思えるのは、始まりはきちんとお互いが好き同士だからだ。