慈愛のケモノ
こちら。
驚いて顔を上げると、高身長のスーツを着た男性がいた。
「琉花ちゃん」
呼ばれて漸く一致した。
「あ、遠月さん。こんにちは」
「こんにちは」
とりあえず挨拶をしてみると、挨拶が返ってくる。
「食べたいものある?」
「えっと、特に」
なんて、困る返事ナンバーワンをしてしまう。
それでも遠月さんは嫌な顔ひとつせずに、「じゃあパスタとかでも良い?」と尋ねてくる。
頷いて、遠月さんの背中についていった。
うちの会社の裏にある通りに、そのレストランはあった。
店内は静かで、私たちは窓際のテーブルに通された。