慈愛のケモノ
今日行こうと書かれたそれに、思考が止まる。
途端に面倒くさくなってくる。
「真希……」
トイレに行こうとしていた真希を捕まえる。
一緒にいた広報部の後輩が気を遣って離れていった。
「今日、行ってくる……」
「まじで。話早いね、行ってらっしゃい」
「お金ないって断って良い?」
「貸してあげるから行ってきなさい」
神様は越えることの出来る試練しか与えないというけれど。
私の試練はやり過ごすことの一点に重きが置かれている。
昼休憩に、財布を持って会社を出た。
連絡を取ろうと携帯を出したところで、腕を掴まれる。