慈愛のケモノ

「水本も今忙しいから、また今度四人で飲みに行こう」
「はい、ぜひ」
「おすすめはなすとベーコンのパスタ」
「あ、はい。じゃあそれで」
「良いの?」

驚いたような声が聞こえてきて、私が思わず顔を上げた。
目が合うと、笑われる。

「え?」
「いや、流れるようにメニュー決めたから。ちょっと驚いた」
「好き嫌い、ないので……」

会話のテンポが掴めず、どう返事をしたら良いのか考える間もない。
笑う遠月さんはこの前会った時よりも柔らかい雰囲気で、何だか別人にも見える。

何を企んでいるんだろう、とか思ってる私がいる。

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