慈愛のケモノ
死ぬ覚悟で、証拠を突きつけたのだった。
それは上まで上がって、消し飛ばされるかと思ったけれど、社長まで話がいったらしい。
先輩は数日後、地方へと飛ばされた。
謝罪の手紙が届いたけれど、もう同期は帰ってこない。
……私も大概、変な人間なのかも。
「あんまり、無茶しないでね」
「うん、ありがとう」
給湯室を出ると、始業ぎりぎりだった。
二人して慌ててフロアに入る。
部長からの視線を感じながら、目配せを送る。
可愛くあの子は笑った。
慈愛のケモノ END.
2020414