慈愛のケモノ

『あんたみたいな出来損ないは、誰にも愛されないよ』

昔投げつけられた言葉を思い出して、自嘲げに笑った。笑うことでやり過ごす。

お酒飲みすぎたかな、なんか気持ち悪い。

トイレから出ると、遠月さんがいた。何故か私のバッグを持っている。

「今、会計してる」
「え、お金……」
「大丈夫、水本の奢りだから」

悪戯そうにふわりと笑った。
あ、笑うんだ、この人。
真希と連絡先が交換できて嬉しかったんだろうか。

「バッグ、ありがとうございます」

受け取って、水本さんにもお礼を言う。

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