仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
そう言って片方の口角を器用に吊り上げる。自虐的な笑みに見えた。
「今回の賞品も返品しようとしていたんだろう?」
「そうですね。あっ〝そう〟というのは興味がないと社長を全否定する意味じゃないんです。ただ社長は雲の上に住んでいるような人だし、私はどちらかというとおいしいものの方がいいなってだけで」
慌てて訂正して言い直す。いくらなんでも勤め先の社長に失礼だ。
「なるほど。俺はそのクラブハウスサンドより劣るってわけだ」
「やっ、違いますって! そういうつもりではなくて」
「色気より食い気ってやつか」
「そう、それです!」
まさにその言葉が最適だ。
「〝おいしい〟は最強です」
思わず空いている片手で握りこぶしを作る。
「おいしいものは世界を救うからね」