強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「ごちそうさまでした。芳奈ちゃん、料理うまいね。真面目に、店で出せるレベルだよ」

「いえいえ。そんなことはないと思いますけど、お口に合ったのなら良かったです」
 
料理を褒められるのは、素直に嬉しい。手のこんだものは作れないけれど、また天袮さんにも食べてほしい──そう思った。

「兄貴はいいよな、こんな旨い料理が毎日食べれて。俺もここで、一緒に暮らそうかなぁ」

「は? バカも休み休み言え。おまえがいたら、芳奈を可愛がることができないだろう」
 
八雲さんの口から飛び出した予期せぬ言葉に、思わず彼を凝視する。
 
可愛がる? 八雲さん、嘘はよくありません。強いて言うならからかう、いやイジメるというのが正しいと思うんですけど。
 
でもそんなこと八雲さんに言ったら、何倍もの仕返しをされるに決まってる。

ここは何も言わず、穏便に──。

これは八雲さんと過ごすようになって、二週間で学んだこと。言わぬが仏ということわざもあるように、わざわざ本当のことを言って相手を怒らせる必要はない。

だってその反撃を受けるのは私自身、なのだから。


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