強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
定時を三十分過ぎた、十八時ちょうど。

ポキットに関する資料を揃え持っていく書類とともにバッグにしまうと、一度深呼吸してから宮下部長のところへと向かう。

「宮下部長」
 
部長は顔を上げ、ニヤリと片方の口角を上げる。

「梅岡、いい顔をしているな。準備は整ったか?」

「はい、抜かりなくです。先方にアポが取れたので、明後日の日曜日に名古屋に入ってお店の状況などを見てから、話を進めたいと思います」
 
チョコレート専門店の『ショコラティエ煌月(あきづき)』の日曜日は、朝から行列ができるほどの人気で。でも午後三時には閉店と決まっているので、その後に会う手はずになっている。

「副社長も一緒の件は、大丈夫そうか?」

「は、はい。なんとか……」
 
大丈夫そうかと聞かれて、今更大丈夫じゃない……とか言えるわけがないでしょ。

コラボのお願いをすることへの不安はなくなったけれど、八雲さんと一緒に名古屋に行くことは不安でしかない。

「梅岡、交渉は焦らずだ。気合い入れて行ってこい!」

「……はい」
 
私と八雲さんの裏の事情を知らない、部長のその元気が恨めしい……。
 
デスクに戻り荷物が入って重くなったバッグを肩に掛けると、商品企画部のフロアを出た。





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