強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
「忘れてって何を?」

「ここに来てからの全般?」

「無理。そんなこと今更だろう」
 
即答されて、次の言葉を失う。

「でも……」
 
好きだと気づいてしまった今、顔を見ていられないというか、腕に手が触れているだけでドキドキが止まらないというか……。
 
とにかく、胸が苦しくてたまらない。生まれてはじめての恋に、心臓が破裂しそうだ。

「よし、できた」
 
でも八雲さんは、そんな私の気持ちもつゆ知らず。手際よく手当を終えると、私のヤケドをした腕と反対の右手を掴んで立ち上がる。

「腕のヤケドも軽傷で済んだし、サンドイッチは夜食に取っておいて、上のラウンジで軽く飲まないか?」
 
いつの間にか手は恋人繋ぎになっていて、これではノーは言えないと苦笑い。

「いいですよ」
 
彼の手を握り返すと、笑顔で歩き出す八雲さんの後についていった。



< 179 / 230 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop