強引な副社長の婚前指南~偽りの極甘同居が始まります~
新作を一番に食べられる。それはもちろん光栄なことで喜ばしいことなのに、一瞬ためらったのは今回の交渉のことが頭をかすめたから。

このチョコレートを食べた感想が的外れなものだったら、煌月さんとの交渉がうまくいかなくなってしまう。八雲さんも期待してくれているこの企画を、失敗に終わらせるわけにはいかない。

それでも煌月さんの行為を無下にはできず、緊張の面持ちで手を伸ばす。それをゆっくり眺めた後、口へと運ぶ。一瞬甘い香りが鼻をかすめて、それだけで幸せな気持ちが溢れ出す。

「いただきます」
 
一口サイズのチョコレートが口の中に収まり、最初に少し苦味が走ってそれがビターチョコレートだとわかった。中には濃厚なキャラメルソースとガナッシュが入っていて、口の中いっぱいに溶け広がる。
 
ガナッシュの魅力は、このチョコレートが溶ける食感なんだよなぁ。
 
頬を押さえ満足気に微笑んでいると、八雲さんにおでこをピンと小突かれる。

「うっ。何するんですか、痛いです」

「さっさと感想を言え。いつまで待たせる気だ」
 
あ、そうでした。このチョコレートの美味しさに浸ってしまっていた。


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