たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
階段を上がった先はすっかり暗い路地と化していた。

通りにあるカフェにもまだ明かりは灯っていたけれど、今日に限って人通りが全くない。

昨日今日と厄日だ。

っていうか、元凶の発端は錦小路社長であり、彼そのものが私にとって厄なのかもしれない。

前髪をかき上げ大きく深呼吸しながら、タバコをふかしている男性を前で足を止めた。

男性は、タバコを咥えニヤニヤと私舐めまわすように見ている。そして、肩をいからせながらゆっくりと私に近づいてきた。

路地の先は行き止まりだ。

反対側の先は大通りに面しているけれど、随分と距離がある。

逃げ足だけは早いんだけど、こんな狭い路地を逃げ切れるか。

相手の様子を伺いながら、逃げるチャンスを探していた。

タバコを地面に落とし、ぎゅっと踏みつけた男性は意味深な顔で笑う。

「あの女はいつもああなんだ。嫌がってるようで喜んでんだよ。それなのに、よくも俺達の邪魔してくれたな。ただで済むと思うなよ」

凄味のある口調とそぐわないにやついた口元が不気味に感じる。

「お前、バーでは薄暗くてわからなかったけど、よく見たらかわいい顔してんじゃねぇか。俺と一晩付き合うならさっきのことは許してやってもいいがな」

そう言うと、もう一本タバコの火をつけ私に顔を近づけてきた。

タバコの煙にむせながらもぐっと彼を睨みつける。
そして、この男性の右側からすり抜ければなんとか逃げ切れるかもしれないと感じた。

自分のバッグを胸に抱き、ぎゅっと握りしめる。

今だ!

男性の視線が少しそれたその隙に一気に走り出した。
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