たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
その瞬間、「おらっ!」という男性のどすの利いた声が響き渡り、私の腕がもぎとられるかと思うほどの強い力で掴まれる。

そう易々とは逃げ切れなかった。

強く掴まれた状態で私の体はぐるんと男性の方に引き寄せられ、地面に押し倒される。

その衝撃で私のバッグはバーへ続く階段の手前まで吹き飛んだ。

掴まれた腕は背中に押し付けられたまま、その男性は倒れている私に馬乗りになる。

さすがにこの状況では身動き一つ取れない。大きな声を出して助けを呼んでみようか。

飛ばされたバッグに目をやると、バッグのすぐ横に大きめの革靴を履いている足が見えた。

誰かいる?

「なんだ貴様?!」

突然の現れた革靴の主の存在に男性も慌てたのか押し付けてくる体が僅かに緩む。

その途端、男性の体がふわっと宙に浮き私の目の前に倒れ込んだ。

男性はなんとか上体を起こし、自分を投げ飛ばした革靴の主をにらみつけ叫ぶ。

「お前、なにしやがんだ!」

その声と同時に「うっ」という苦し気なうめき声がし、革靴の主が男性の襟首をぐっと掴み引き上げるのが見えた。

その革靴の主はとても背が高くて、軽々とその男性を持ち上げている。

「いてっ!離しやがれ!」

暴れる男性の襟首は突然離され、そのまま革靴の主の足元に倒れる。

「なんて、馬鹿力だ……」

明らかに翻弄されている男性は怖気づいたのか、「覚えてろ!」と捨て台詞を吐くと大通りの方へ一目散に逃げていった。
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