たとえばあなたのその目やその手とか~不釣り合すぎる恋の行方~
完全に男性が大通りに消えていったことを確かめると、私はゆっくりと体を起こした。

我ながらあれだけの勢いで倒されたというのに腕を少し擦りむいただけの軽傷の自分に驚きつつ、男並みの頑丈な体に産んでくれた母に感謝せずにはいられない。

革靴の主さんにお礼を言わなくちゃ。

「あの、助けて頂きありがとうございました」

薄暗い中、彼の背後の小さな街灯がそのシルエットだけを浮き上がらせていた。

モデルのようなスタイルのよさに感心しながらその人の顔の方を見上げる。

あれだけ暴れた後とは思えないほど、一寸の乱れもない品のいい立ち姿にきっと今まで自分が出会ったことのない人種だと感じた。

彼からは街灯に照らされた私の顔が露わになっているはずだと気づき急に恥ずかしくなりうつ向いてしまう。

「……お前?」

彼が長めの前髪を掻き上げながらそう呟いた。

「お前は、昨日といい今日といい危機管理が全くなってないな。もっと自分を大事にしないといつか本当に痛い目に合うぞ」

昨日といい、今日といい??危機管理がなってないって。

低音の心地のよい声の割に、冷ややかな口調で言い放つ。

昨日のことを知ってる人って……まさかまさかだよね?

「あの……どこのどなたか存じませんが、まさか昨晩、無様な私を助けて下さった方ではないでしょうか?」

恐る恐る尋ねてみる。

彼は「さあ?」と吐き捨てるように言うと、ジャケットの裾を整えそのままその場を立ち去ろうとした。

違ったのかな……。

彼が私の前を通り過ぎようとした時、明るく照らされた彼の横顔がようやくはっきりと見えた。

端整な横顔は一般人とはかけはなれた美しさで、男性に興味のない私ですら思わず目を奪われるほどだった。

切れ長の目の下には鼻すじの通った形のいい鼻と、くっと引き締まった唇。

その口元に小さなホクロがあることを見逃さなかった。

190もあるような高身長のこのイケメン男性は……。

「錦小路社長!」

思わず彼の斜め45度の横顔に向かって大きな声で叫んでいた。

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