俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 生徒の保護者から、『書道教室に通ってから、子供が落ち着いて集中力が上がりました』と感謝されたりもする。

 できればもっとたくさんの人に、書道の魅力を伝えられたらいいんだけど……。

 なんて思いながら指導をし、一時間半の教室を終え生徒たちを見送った。

 生徒が帰りがらんとした和室。
 その床の間には『平常心是道』という書が飾ってある。

 力強いけれどしなやかな流麗さも併せ持つ祖父の作品。
 その五文字の言葉には、『日常の心掛けこそが道である』という意味が込められている。
 まじめで堅実な祖父らしい書作だ。

 私が書を見上げていると、後ろから服をひっぱられた。
 振り返ると生徒のひとり、小学五年生の斗真くんが立っていた。

 斗真くんはやんちゃで元気のいい男の子だ。
 元気が有り余っていて、少し落ち着いてほしいという彼の母の希望で、最近書道教室に通い始めた。

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