俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 上ずった声で問いかけると、彼の笑みが深くなった。

「綾花が縁側でうたた寝をしていたから、体が冷えないようにと思って」
「それなら、抱きしめないで、毛布かなにかをかけてくれれば……」
「しまってある場所がわからなかった」

 毛布やタオルケットは、貴士さんの使っている部屋の押し入れにも入っているんだから、場所がわからないはずがない。

 涼しい顔で嘘をつく貴士さんを涙目で睨み、「からかわないでください」と腕から抜け出そうとする。

 貴士さんは私の抵抗を軽く受け流しながらくすくすと笑った。
 そして、じたばたと動く私の手首に触れた。

「着物は露出が少ない分、少し肌が見えるだけで妙に色っぽく見えるな」

 そうつぶやき、私の腕を掴む。
 着物の袂がするりとすべり、肘の近くまであらわになる。
 貴士さんの男らしく大きな手の中にあるせいか、私の腕はとても細く頼りなく見えた。

< 114 / 297 >

この作品をシェア

pagetop