俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 きっと我が家で食べるような質素な和食ではなく、高級なお店で豪華な食事をしているんだろうな。
 もしかしたら、素敵な女性と一緒に過ごしていたりして。

 その姿を想像して胸がきゅっと苦しくなる。

 ガラス戸の向こうの夜の庭は、夕暮れから降り出した雨で濡れていた。
 雨粒がぽつぽつと瓦屋根をたたく音を聞きながら、そういえば雨はひさしぶりだなと思う。

 考えてみたら、貴士さんが来てからはずっといいお天気だった。

 静かに降り続ける春の雨は、庭にある八重桜の花びらを散らした。
 石の上に濡れて張り付いたいくつもの花弁は、まるで自分の心模様を表しているようだ。

 この家は平屋だから、どこにいても雨の気配を感じる。

 雨音を聞きながらぼんやりとしていると、居間から続く和室の鴨居に貴士さんのジャケットがつるされているのに気が付いた。

 私は鴨居に近づきジャケットをハンガーから外す。
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