俺様社長と<期間限定>婚前同居～極上御曹司から溺愛を頂戴しました～

「それで、なにか急ぎの用事でもあったの？」
「そうそう。綾花、貴士くんを覚えてる？」

　ひさしぶりに耳にした懐かしい名前に、心臓がきゅんと苦しくなった。
　覚えてるにきまってる。貴士さんは四歳年上の幼馴染で、私の初恋の人だ。

「その貴士くんと綾花の婚約が決まったわよ。おめでとう」

　突然祝福され、混乱のあまり言葉が出なくなる。疑問がたくさんありすぎて、なにから聞けばいいのかわからなかった。

　だって、貴士さんと私が婚約なんて、ありえない。

　私の沈黙を了解だと解釈したのか、母は「じゃあ、そういうことでよろしくね」と言い残し電話を切った。

「よろしくって、なにが……？」

　慌てて受話器に向かってそう問いかけたけれど、もちろん返事はなかった。


　　　



　葛西家と貴士さんのご実家である都築家は、それぞれ日本有数の名家だ。