俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 きょとんとする俺の手を持ち上げ、自分の左胸に押し当てた。
 ふにっと柔らかな感触に、手がこわばった。

「な……っ」

 なにをしているんだ!と心の中で叫ぶ。

「ほら。こんなに鼓動が速くなってるの、わかります?」

 真剣な訴えに、俺ははぁーっと大きなため息をついた。

「寝ぼけてる綾花は無防備すぎて、こっちが困る」

 俺の気持ちが伝わったのか、綾花はつかんでいた手を放した。
 もっとこの胸に触れていたかったけれど、ゆっくりと手を引っ込める。
 なんとか理性を奮い立たせてこらえた自分をほめてもらいたい。

 気を紛らわすために、「そういえば、寝ながらなにを抱きしめていたんだ?」と問うと、彼女は胸に抱いていた黒いものを広げて見せた。
 それは、見覚えのあるジャケットだった。

「もしかして、俺のジャケット?」
「貴士さんがいなくて、さみしかったから」
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