俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 そう思っていたのに、綾花は俺の肩に頬ずりをした。

「……奪ってください」

 とんでもない誘惑に「ぐっ」と言葉につまる。

「私を抱いて、貴士さんのものにしてください」

 さらに甘い声でねだられて、のどがごくりと上下した。
 綾花の肩に手を置いて、葛藤する。

 このまま押し倒してしまおうか。でも寝ぼけている彼女を抱くのは卑怯だ。しかし本人が抱いてくれと言っているし……。

 頭の中で理性と欲望が戦う。これはいったいなんの試練だろう。

 何度か手に力が入りかけ、けれど葛藤の末その手を下ろした。
 俺の胸の中にいる綾花から体を離し、顔をのぞきこむ。

「そうやって、人の理性を壊すようなことばかり言うな」
「……貴士さん?」
「綾花のおねだりにはかなりそそられるけど、今は抱かない」

 こうやって綾花が甘えてくるのは、これが夢だと思い込んでいるからだ。
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