俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 普段の彼女だったら、絶対にこんなことは言わない。
 そうとわかっていて、今の状態で手を出すのはいくらなんでも卑怯すぎる。

 俺の拒絶の言葉に綾花は眉尻を下げる。
 しょんぼりした表情の彼女をなぐさめるように、額に触れるだけのキスをした。

「寝ぼけた綾花を抱いてまた前みたいに忘れられると困るから、今日は我慢する」

 俺がそう言うと、「前みたいにって、なんですか?」と綾花は首をかしげた。

 その反応に、やっぱり忘れているのかと苦笑する。


 二年前、俺は綾花とキスをしたのに、彼女はキスをしたことがないと言っていた。
 ふたりで交わした約束も、すっかり忘れているようだった。

 人の気も知らないで、と心の中で苦笑しながら、「もう寝るぞ」とちょっと乱暴に綾花の頭をなでた。




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