俺様社長と<期間限定>婚前同居～極上御曹司から溺愛を頂戴しました～

「新しい事業、ですか？」
「あぁ。日本の各地で埋もれている伝統工芸品や、すぐれた技術を持っているのにアピールする場を持たない小さな企業にスポットを当てて紹介する、クラウドファンディング事業」
「クラウドファンディング……」

　首を傾げながら繰り返す。

「たとえば書道に使う硯でも、驚くほど高価なものもあれば、大量生産され気軽に買えるものもある。どちらがいいというわけじゃなく、高価なものには昔から守られてきた伝統や技術、そこにこめられた職人たちの想いがあるだろ」

　わかりやすいように硯でたとえてくれた貴士さんに、私は身を乗り出してうなずいた。

　高価な道具を使ったからといって上達するわけではないけれど、職人さんの手で丁寧に作られた道具を使うと、自然と背筋が伸び、一文字一文字丁寧に心を込めて書ける気がする。