俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 祖父の家で教室を開いているおかげで、家賃はまったくかからない。
 それに物価の安い田舎で質素な生活をしているから、なんとかやっていけてるだけだ。

「書道教室の講師だけでは物足りないなら、もっと自分の作品を世に出せばいい」

 そう言われ、私は目をまたたかせた。

「綾花の柔らかくて美しい書は、書道愛好家だけじゃなく、たくさんの人に受け入れられる魅力があると思う」

 ふと、中村さんにパッケージのロゴを依頼されたのを思い出した。
 あのときは自分には恐れ多いと怖気づいたけれど……。

「そういえば。昨日中村さんが訪ねて来て、お仕事を依頼してくれたんです」
「中村って……、あの男か」
「あ、このイチゴも中村さんにいただいたんですよ」

 私が付け加えると、イチゴの載ったお皿を見下ろし、眉をひそめる貴士さん。
 あからさまにむすっとした不機嫌な表情は、大人で余裕のある貴士さんらしくない。

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