俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
「俺は一度、結婚を断られているから」

 貴士さんは額を合わせたまま眉を顰め、低い声でそう言った。
 その言葉に胸がずきんと痛くなる。

 彼の言う『拒絶』は、姉のことだろう。
 貴士さんは姉を愛していたのに、姉は違う男の人と結婚しようとしている。

 婚約者に裏切られた心の傷は、今でも彼を苦しめているんだ……。

「綾花?」

 瞳がうるんでいるのに気づいた貴士さんが、私の名前を呼びながら顔を覗き込む。

 長い指が私の髪をすくいあげ、耳にかけてくれた。
 その優しい仕草にぐっと愛おしさが込み上げてくる。

 私は慌てて息を飲みこみ、「なんでもないです」と首を横に振った。

「今日、話し合いがあるそうなので、詳しい話を聞いて来ようと思います」

 気を取り直してそう言うと、貴士さんが「俺も行く」と言い出した。

「なに言ってるんですか」

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