俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
「いえいえ。急なご依頼の上に、納期もタイトで申し訳ないです」

 町名と数種類の商品名を来週中にとお願いされている。
 期限は短いけれど、デザイン性の高いアート作品ではなく、あくまで楷書で分かりやすくとの注文なので問題ないだろう。

「大丈夫ですよ。精一杯頑張ります」

 そう言って微笑むと、中村さんの頬が赤くなった。
 そのまま言葉に詰まってしまった彼に首をかしげながら、無言で役場の廊下を歩く。

 改めてスケジュールを頭に思い浮かべ、「来週中……」とつぶやいた。

 パッケージの納期と同じく来週いっぱいで、貴士さんが言っていた一ヶ月間の同居期限になる。

 まだ貴士さんがいつ東京に帰るのかはっきり聞いていないけれど、いっしょに暮らせるのもあと少しなんだと実感して、寂しさがおしよせてきた。

 思わずうつむくと、隣を歩く中村さんが立ち止まった。
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