俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
『た、貴士さん、なんて言い方を……!』

 またも凍り付いた空気に戸惑う私の腰を抱き、貴士さんは『行くぞ』と有無を言わさず歩いていく。

『見たかあの卑屈な笑顔。裏で人の足を引っ張ろうとする醜い人間の言葉なんて、綾花は聞かなくていい』
『貴士さん……』
『俺は、まっすぐで誠実な人柄が伝わる綾花の字が好きだよ』

 彼が好きと言ったのは私に字なのに、まるで自分自身を好きだと言ってもらえたような気がして心臓が大きく跳ねた。

 そして彼の頼もしさに、どうしようもなく愛おしさがこみあげてきた。

 小学生のころからずっと彼に憧れて来たけれど、これは恋なんだ。
 そのとき私はそう自覚した。

 私はずっと、貴士さんに恋をしていたんだ――。



 



 けれど、恋を自覚してすぐに、私の初恋は無残に散った。

 貴士さんと姉の婚約が発表されたのだ。

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