俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
『皆様、この度は受賞おめでとうございます』

 凍り付くその場の空気を楽しむように、冷笑を浮かべ受賞者ひとりひとりを見回す貴士さん。

『賞の選考に問題があったのなら、書道展のスポンサーである都築ホールディングスの責任でもあります。なにかご不満がおありでしたら、私がお聞きしましょうか?』

 長身の彼は、とても謝罪する気があるとは思えない慇懃無礼な態度でその場にいる人たちを見下ろす。

『いえ、不満なんて』
『若い人が賞をもらうのは書道界にとってもいいことですし』
『とてもすばらしい作品でしたしね』

 とりつくろうように言い合う受賞者たちに、貴士さんは優雅に微笑んだ。

『そうですか。それはよかった。では、人をひがむことでしか自尊心を満たせないようなあなたたちと同じ空気を吸うのも不愉快なので、これで失礼します』

 貴士さんは私の荷物を持つと、踵を返し廊下へ向かう。

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