俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 ゆるく波打つ黒髪の間からこちらを見つめる視線が鋭くて、私は胸の前でぎゅっと手を握りしめた。

「そういうわけじゃ、ないですけど……」

 緊張で語尾が弱弱しくなっていく。

「幼馴染とはいえ、ここ数年ほとんど会っていなくてお互いをよく知らないのに、突然結婚と言われても困ります」

 貴士さんは腕を組み黙ったまま私を見下ろしていた。
 その視線に気圧されながらも、必死に言葉を続ける。

「それに、私は亡くなった祖父に、この家を守ると約束したんです。ですから、結婚して東京で暮らすなんて勝手に決められたくありません」
「……なるほど」

 私の言葉に、貴士さんは納得してうなずいた。

 拒んだのは私なのに、結婚出来ないという意見がすんなり受け入れられて驚く。

 それだけ彼は私との結婚に執着していないんだろう。
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