俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 体勢を低くして、生け垣の下に隠れるようにしながらこちらを見ている。この辺りを縄張りにしている、野良猫のシマノさんだ。

 シマノさんという名前は、尻尾のシマシマが見事だから私が勝手に命名したもの。

 私は小走りで台所へ向かい、出汁取り用の煮干しを持って戻って来た。

「シマノさん、煮干しだよ」

 声をかけながら小さな煮干しをシマノさんの方へ放ってあげる。

 そして縁側にしゃがみじっと見つめていると、シマノさんは鼻先に落ちた煮干しを冷めた目で一瞥した。

 食べてくれるかな。

 期待をしながら観察していたけれど、シマノさんはぴくりと鼻を動かすこともなく立ち上がった。くるりとこちらに背を向けて、生け垣の向こうに歩いて行く。

 ……今日もフラれてしまった。

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