俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 シマノさんが庭にくるたび仲良くなろうと頑張っているのに、まったく相手にしてくれない。私は地面に取り残された煮干しを見下ろし、ひとりため息をついた。







 私、葛西綾花は都心から車で三時間ほどの場所にあるのんびりとした田舎町で、ひとり暮らしをしている。

 住んでいるのは古くて趣のある日本家屋だ。

 瓦屋根の平屋に、竹垣に囲まれた和風庭園。昔ながらの格子戸の玄関には、檜の板に凛とした美しい書体で『葛西書道教室』と書かれた看板が掲げられている。

 二十四歳の独身女性がひとりで暮らすには、かなり立派すぎるし渋すぎる。

 都心で生まれ育った私がここに引っ越してきたのは二十二歳のとき。大学卒業と同時に、祖父の暮していたこの家に移り住んだ。

 私の祖父は書道家だった。
 国内外にファンがいて、個展を開けば作品は次々に売れる。国民的な時代劇の題字を手掛けたこともある有名書家。
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