俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~

 しかし本人は地位や名声には興味を持たず、この田舎町でマイペースに作品を手掛ける傍ら、自宅で書道教室を開いていた。

 おじいちゃん子だった私は、夏休みや冬休みになると、いつも祖父の家に泊まり込み書道を習った。
 引っ込み思案で大人しくうまく学校になじめなかった私にとって、静かでのんびりとした祖父の家はとても居心地がよかった。

 そんな私を、祖父はいつも受け入れてくれた。
 私は大好きな祖父に褒められたくて、のめりこむように書道に夢中になった。

 自宅の近くの書道教室にも通い、十八歳で師範代の免許を取得した。
 大学生のときには有名な賞をもらった。

 けれど、大学の卒業が近づいたころ、突然祖父が倒れた。

 搬送されたという知らせを受け病院に駆けつける。
 ベッドの上で人工呼吸器をつけ、苦しそうに胸を上下させる祖父を見て、私は取り乱し泣き叫びそうになった。
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