俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 それが理由で婚約の話は一旦保留された。

 それから今まで、貴士さんは姉との結婚を両親に認めてもらうために、必死に頑張ってきたんだろう。

『だから、社長は今回かなりのショックをうけたようですよ』
「ショック?」
『結婚を断られた件です』

 貴士さんと婚約していた姉が、アメリカ在住の芸術家とかけおちすると言い出したことを思い出す。

『あの人は強がりですから、あなたにはその動揺を見せたりしないでしょうけど。相当落ち込んでいたんですよ』

 貴士さんは涼しい顔で姉の話をしていたけれど、本当はとても傷ついていたんだ。

 姉と結婚するためにずっと頑張ってきたのに、姉は婚約者の貴士さんを裏切って、ほかの男の人と……。

「そんなの、ひどすぎる……」

 貴士さんの気持ちを想像すると、切なくて胸が痛んだ。
 ぐっと唇を噛んでこらえようとしたけれど、瞳が涙でうるんでいく。

『綾花さん?』

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