俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 こらえてきた羞恥心が爆発したんだろう。
 視線は泳ぎ、肩はぷるぷると震えていた。

「悪い。必死な綾花がかわいすぎて」

 笑いすぎて涙が浮かんだ目元をぬぐいながら謝る。

 そして俺は立ち尽くす綾花の横を通り過ぎ、迷いなく縁側に向かった。
 すっかり日に焼けて色褪せた木の床に腰を下ろす。

 突然近づいてきた俺に警戒する猫に向かって微笑み「おいで」と手を伸ばした。

 縞模様の猫はじっと俺を睨みつける。
 それでも目をそらさず眺めていると、しなやかな毛皮で覆われた背中からふっと緊張が解けた。

 前足をわずかに浮かし、こちらを見る。
 指先を柔らかく揺らして見せると、猫は浮かした足を一歩進めこちらに近づいた。

 確認するように俺の指に鼻をよせ、くんくんと小さな鼻を動かした。
 そしてそのまま額をこすりつける。

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