俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 柔らかい毛並みと小さな頭の感触に頬を緩ませると、背後で息をのむ気配がした。

「シマノさんが貴士さんに体を触らせている……!」

 振り返ると、綾花がそうつぶやきながら手で口もとを押えていた。

 どうしてそんなに驚いているんだろうと首をかしげると、綾花はぷるぷると小さく震えながらこちらを睨む。

 どうやら、猫をなでる俺をうらやんでいるようだ。

「……やっぱり貴士さんはものすごいたらしですね」

 綾花は悔しさの滲む声で言って唇をかむ。

「なんだよ、たらしって」
「ご近所さんだけでなく、野良猫までこんなに簡単に手懐けてしまうなんて……」
「手懐けるって大袈裟だな。ただなでてるだけだろ」
「だって、私は二年間ずっとシマノさんと仲良くなろうって頑張ってきたのに、まだ一度も触れたことがないんですよ」

 すねた口調で言う綾花がかわいくて、口元がゆるんだ。
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