俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 どうしていいのかわからないのか眉を八の字にして黙り込む綾花に、俺は「おいで」と微笑みかけた。

 シマノさんののどをなでていた手を、今度は綾花のほうへのばして誘う。

 綾花は警戒する猫のようにしばらくじっとこちらを見てから、こくりとつばをのみこんだ。
 そしておずおずとこちらに近づく。

 綾花の気配にシマノさんは音もなく縁側から庭に降り、生け垣の向こうへ歩いて行った。

「あ、行っちゃった……」

 シマノさんの後ろ姿を見て、綾花は残念そうにつぶやく。

 そんな彼女に、さっきまでシマノさんが座っていた縁側をとんとんと叩き、座るように促す。
 素直に腰を下ろした綾花に、くすりと笑い話しかけた。

「綾花は臆病でおそるおそる近づこうとするから、緊張が伝わって逃げられるんだ」
「緊張、ですか?」
「猫に対しても俺に対しても、身構えずにもっと素直に自分の気持ちを出せばいい」

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