俺様社長と<期間限定>婚前同居~極上御曹司から溺愛を頂戴しました~
 私なりに頑張ってきたけれど、このご時世、少子化や過疎化もあり書道教室に通う生徒さんは減る一方だ。

 祖父が講師をしていたときは週四日開いていた教室も、今では週二回になってしまった。
 あとは、個人レッスンを受けているご年配の生徒さんが何人かいるだけ。

 居間のレトロな茶箪笥の上には、祖父の写真が飾ってある。
 仏壇は本家にあるので、祖父を思い出すとき、私はひとりこの写真に話しかける。

 いつものように写真の前に水が入ったコップを置いて、「おじいちゃん」と声をかけた。

「おじいちゃん、私はいつまでこの教室とこの家を守っていけるんだろう」

 ぽつりと弱音を吐いたけれど、写真の中の祖父は柔和な笑顔を浮かべるだけでなにも答えてくれなかった。



 



「綾花先生、こんにちはー!」

 午後になると、しんと静かだった日本家屋に元気な声が響く。
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