荒野を行くマーマン
「えっと、じゃあ、分かった」


なので私は覚悟を決めた。


「これからは『ですます調』を使うのはやめるね」

「すみません。生意気にも、意見するような事を言ってしまって…」

「ううん。全然そんなことないよ。あ、そろそろ部屋に戻ろうか」


言葉を紡ぎながら、何気に目にした壁際の時計の針が始業7分前を指していたのでそう促した。


「はい」


それぞれマグカップを手にし、その場から歩き出す。


「じゃ、端末の電源を入れて、後は部長が来るまで好きなように過ごしていてね」


デスクにたどり着いた所で、自分自身手を動かしつつ隣の魚住君に指示を出した。


「分かりました」


素直に動き出す彼を横目に見ながら私はこっそりと左手を頬に当てた。


……やっぱり熱い。


何故だか知らないけど、魚住君にタメ口を使うという行為がどうにもこうにも照れくさくて。

ほんの数分の間にどんどん体温が上昇していくのを感じていた。

この分だと、さぞかし顔色も赤らんでいることだろう。

学校の部活や委員会、バイト先等で、年下の男の子と話す機会はそれなりにあり、その時は普通にタメ口を使っていたというのに、相手が魚住君になるとなんでこんなにこっ恥ずかしいんだか。

我ながら変なの。

徐々に席に着き始めた周りの先輩方に顔色を突っ込まれる前に、早いとこ気持ちを落ち着かせようと、私は改めてコーヒーをゆっくりと啜った。
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