荒野を行くマーマン
「それじゃあ、他に何か気になることとかありますか?」

「気になること、ですか…?」

「あ、ごめんなさい。まだ始業前なのに」



私の矢継ぎ早の質問に彼が若干戸惑ったような表情になったので、慌てて弁解した。


「ただ、仕事中だとバタバタしちゃってなかなかじっくり話を聞けないかな、と思っちゃって。ちょっと急ぎすぎましたね」


問題点はこれからおいおいヒヤリングしていけば良い事だ。

こういうとこ、ホント先輩としてまだまだだなと思う。


「いえ。気を遣っていただいてありがとうございます」


そう答えた後、魚住君は一瞬思案し、遠慮がちに続けた。


「それでは…すごくおこがましいんですが」

「え?」

「天童さん、僕にずっと敬語を使って下さってますよね」

「あ。言われてみれば」


指摘されて初めてその事実に気が付いた。

今まで部署内では自分が一番年下で、敬語で話すのがデフォルトだったので、魚住君にもそのまま同じ口調で接していた。


「自分の方が年下で新人な訳ですし、お気を遣わないで下さい。くだけた話し方をしていただいて構いませんので」

「は、はい…」


私としてはもう敬語の方が使い慣れてるし、年齢関係なく口調は統一していた方が実は楽だったりするのだけれど、おそらく小さい時から上下関係が厳しい環境で過ごしてきた魚住君にとっては、たとえ1歳だけだとしても年上にそういう話し方をされるのはこの上なくやりづらい事なのだろう。
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