後輩くんはワンコ時々オオカミ


委員会は30分ほどで解散となり
涼太を待つために噴水ベンチで待つことになった私は


時間潰しのためにと鞄に入れっぱなしのラノベを開いた


お昼休みと違って
噴水ベンチには人影もない

体育祭の準備もあるし、部活動も停止中で
用事の無い生徒はここぞとばかりに街へ繰り出すことが多い


集中するほどの時間もないから
ペラペラとページを捲っていると

その本に影が落ちた


・・・?


「眞子先輩?」


緩い声が聞こえて恐る恐る顔を上げる


「・・・?」


そこに居たのは・・・
一年生の男の子だった


「なんでしょう・・・か?」


誰だっけ?記憶の中の“誰か”をフル回転させるのに
当てはまる人物は簡単には出てきてくれなくて

そんな私に


「やだな、眞子先輩、俺っす」


一歩分近づいた男の子は
涼太みたいに可愛く笑うと
座った私に合わせて屈んだ


「・・・・・・ん?」


タイプは違うけれど
同じワンコタイプの可愛い仕草に

懐かしい顔が降りてきた


「もしかして・・・新太?」


私の声に一度目を大きく開いて
うんうんと頷くと


「正解っ」


大きく振る尻尾が出現した


「新太、久しぶりだね、元気だった?」


「はい!元気っす」


「新太、大きくなったから
分かんなかったじゃん」


「そうっすか?ま、確かに
背は伸びたかもしんないっす」


ニコニコ笑う新太の顔は
三年前の可愛いかったあの頃とダブって見えた


「男の子の成長って凄いね」


涼太といい新太といい
どんだけ成長幅が広がるのかと感心する


「眞子先輩は涼太待ちっすか?」


知っている風の口振りに
鼓動が騒ぎ出す


「あ・・・うん」


「じゃあ涼太が来るまで
隣、良いっすか?」


私の座るベンチの隣を指差すから


「良いよ」


真ん中に座ったままの腰を上げた









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